【第5回】7つの方針②一貫した質を大切にする、ぶれない治療方針
前回は、7つの方針の1つ目「マニュアルだけに頼らない、一人ひとりに合わせた診療」についてお話ししました。
今回は、方針②「一貫した質を大切にする、ぶれない治療方針」についてです。
長い期間にわたることの多い不妊治療において、なぜ「同じ医師が診続けること」を大切にしているのか、お伝えしたいと思います。
【大阪New ARTクリニック 7つの方針②】
一貫した質を大切にする、ぶれない治療方針
生殖医療は、数か月から数年にわたる「一つの流れ」
生殖医療では、一度の診察だけで治療が完結するとは限りません。
検査から始まり、タイミング法、人工授精、体外受精へと治療が続くこともあります。体外受精でも、卵巣刺激、採卵、受精、胚培養、胚移植と、いくつもの過程があります。
患者さんとの関係が、数か月から数年に及ぶこともあります。
そのため生殖医療では、一回ごとの診察だけでなく、これまでの経過を一つの流れとして捉えることが重要です。
複数の医師による診療と、患者さんが感じる迷い
複数の医師が診療を担当する体制には、さまざまな利点があります。診療時間を広く確保でき、多くの患者さんを受け入れることもできます。また、複数の医師の意見を聞けることを安心と感じる方もいらっしゃると思います。
一方、生殖医療には、答えが一つではない場面が少なくありません。
同じ検査結果を見ても、どの治療法を選択するのか、薬の種類や量をどうするのか、もう一度同じ治療を行うのか、方針を変更するのかについて、医師によって判断が異なることがあります。
医学的に複数の選択肢があること自体は、決して間違いではありません。
しかし、担当する医師が変わるたびに説明や方針が異なると、患者さんは「結局、どの考えを信じればよいのだろう」と迷うことがあります。診察のたびに、それまでの経過や以前相談した内容を、最初から説明し直さなければならないこともあります。
院長が一貫して診療を担当する理由
当院では、院長が一貫して診療を担当しています。
初診時の検査結果だけでなく、その後に行った治療、薬への反応、採取できた卵子の数や成熟度、受精後の胚発育、胚移植の結果まで、同じ医師が継続して診ていきます。
前回の結果を、次の判断につなげる
生殖医療では、一回ごとの結果を別々に見るのではなく、前回の結果を次の判断につなげることが重要です。
- 前回、どのような薬を、どのくらい使用したのか
- 卵胞はどのように発育したのか
- 採卵の時期は適切だったのか
- 採れた卵子はどのように受精し、胚はどこまで発育したのか
- 胚移植時の子宮内膜やホルモンの状態はどうだったのか
- そして、その治療を患者さん自身がどのように受け止め、どのような負担を感じていたのか
これらの情報を一つにつなぎ、次の治療方針を考えます。
患者さんの小さな変化にも気づける
同じ医師が継続して診ることで、カルテに記載された数値や治療内容だけでなく、患者さんの小さな変化にも気づきやすくなります。
- 以前より治療への不安が強くなっている
- 仕事との両立が難しくなっている
- 痛みや薬の副作用が負担になっている
- もう一度同じ治療を続けたいのか、それとも別の方法を考えたいのか
不妊治療は、医学的な判断だけで進めるものではありません。患者さんの気持ちや生活の変化も、治療方針を考えるうえで大切な情報です。
「ぶれない」とは、治療を変えないことではない
当院が掲げる「ぶれない治療方針」とは、治療方法を一度決めたら、何があっても変えないという意味ではありません。
治療への反応や結果によっては、薬の種類や量、採卵の方法、受精方法、胚移植の時期などを変更する必要があります。新しい医学的知見を取り入れ、これまでの方針を見直すことも必要です。
必要なときに治療を変えることは、「ぶれ」ではありません。
- なぜ変更するのか
- 何を期待して変更するのか
- 変更した結果を、次にどのように生かすのか
その理由を患者さんに説明し、結果まで継続して見届けることが大切です。
反対に、結果が出なかったからという理由だけで、次々と検査や治療を追加することが適切とは限りません。これまでの経過を検証したうえで、変更する必要がないと判断し、同じ治療を続けることもあります。
変えないのは「治療の基本となる考え方」
当院が大切にしているのは、治療方法を変えないことではなく、治療の基本となる考え方を変えないことです。
- 一人ひとりの経過を丁寧に見ること
- 前回の結果を次の判断に生かすこと
- 必要な治療を行い、必要性の十分でない治療をむやみに追加しないこと
- 治療方針を変更するときにも、その理由を説明すること
- そして、治療の一部分だけでなく、治療全体に責任を持つこと
一回ごとの診療を「点」で終わらせず、これまでの経過とこれからの治療を「線」でつないでいく。
医師が変わらず、治療への責任も変わらない。
それが、大阪New ARTクリニックの考える「一貫した質を大切にする、ぶれない治療方針」です。
次回予告
次回は、方針③「妊娠の可能性を支える、培養室の質へのこだわり」についてお伝えします。ぜひ引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
