【第4回】7つの方針①マニュアルだけに頼らない、一人ひとりに合わせた診療
前回は、ホームページのリニューアルにあたって新たに策定した「7つの方針」についてお話ししました。
今回からは、この7つの方針をひとつずつ取り上げ、当院の考えや実際の診療でのこだわりをお伝えしていきます。
第4回は、方針①「マニュアルだけに頼らない、一人ひとりに合わせた診療」についてです。
【大阪New ARTクリニック 7つの方針①】
マニュアルだけに頼らない、一人ひとりに合わせた診療
マニュアルは必要。しかし、治療方針は一律には決められない
医療には、標準的な手順やマニュアルが必要です。
安全性を守り、一定の質の医療を提供するためには、検査や治療の基本的な手順を定め、それを確実に守らなければなりません。当院にも、安全管理や診療、培養室業務などに関する手順があります。
しかし、患者さんの治療方針まで、すべてを一律のマニュアルに当てはめることはできません。
特に生殖医療では、同じ年齢、同じような検査結果であっても、治療への反応は一人ひとり異なります。
例えば、同じ年齢でAMHの値が同程度でも、排卵誘発剤への反応や採取できる卵子の数は同じではありません。採れた卵子の成熟度、受精率、その後の胚発育にも違いがあります。
さらに、同じ患者さんであっても、毎回まったく同じ反応をするとは限りません。前回は十分な数の卵子が採れたのに、今回は思うように育たないこともあります。反対に、これまで結果が出なかった方法を少し変更することで、胚の発育が良くなることもあります。
数値だけでなく、これまでの治療の「経過」をつなげて見る
生殖医療には、「この検査値なら、必ずこの治療」という一つの答えがあるわけではありません。
年齢やAMHなどの数値は、治療方針を考えるうえで大切な情報です。しかし、数値だけを見て治療を決めるのではなく、これまでどのような治療を受け、どのように反応し、その結果がどうだったのかを詳しく振り返る必要があります。
- どのような卵巣刺激を行ったのか
- 卵胞はどのように発育したのか
- 採取できた卵子の数や成熟度はどうだったのか
- どのように受精し、胚はどこまで発育したのか
- 胚移植を行ったときの子宮内膜やホルモンの状態はどうだったのか
これらを一つひとつ切り離して考えるのではなく、一連の治療としてつなぎ合わせ、次の治療方針を考えることが重要です。
結果が出なかったときこそ、一度立ち止まって検証する
順調に妊娠へ至った場合には、それまでの治療が適していた可能性があります。一方、結果が思うように出なかった場合には、単に決められた次の検査や治療へ進むのではなく、一度立ち止まって検証する必要があります。
- 薬の種類や量を変更するべきなのか
- 採卵のタイミングを見直すべきなのか
- 受精方法や培養方法を再検討する必要があるのか
- 胚移植の方法や時期に改善できる点はないのか
- あるいは、治療を変えずにもう一度行うことが妥当なのか
治療を変更することだけが、個別化ではありません。前回までの結果を検証し、変更する必要がないと判断して同じ治療を続けることも、患者さんの状態に合わせた判断です。
「必要な治療」は、その方の状態と思いから考える
他の方に適した治療が、自分にも適しているとは限らない
近年は、インターネットやSNSを通じて、多くの治療情報を得られるようになりました。他の方が受けた治療を知り、「自分も同じ治療を受けたい」と思うことは自然なことです。
しかし、他の患者さんに適していた治療が、そのまま自分にも適しているとは限りません。新しい治療や検査を加えることが、必ず妊娠の可能性を高めるわけでもありません。
- その治療がなぜ必要なのか
- どのような効果が期待できるのか
- 反対に、負担や不利益はないのか
患者さんの状態とこれまでの経過を踏まえ、本当に必要かどうかを判断することが大切です。
患者さんによって、大切にしたいことは異なる
また、医学的な情報だけで治療方針を決めるわけではありません。仕事との両立、通院の負担、治療費、痛みへの不安、どこまで治療を希望するのかなど、患者さんによって大切にしたいことは異なります。
同じ検査結果であっても、どの治療を選ぶかは、その方の考えや生活によって変わることがあります。
当院が考える「一人ひとりに合わせた診療」
当院が考える「一人ひとりに合わせた診療」とは、特別な治療を数多く行うことではありません。
標準的な治療を基本としながら、検査結果だけでなく、これまでの経過、治療への反応、患者さんの希望や負担を総合して、必要な治療を選ぶことです。
変える必要があるときには変える。
変える必要がないときには、理由を説明したうえで続ける。
そして、必要性が十分でない検査や治療は、むやみに追加しない。
マニュアルを否定するのではなく、マニュアルだけに患者さんを当てはめないこと。
それが、大阪New ARTクリニックの考える、一人ひとりに合わせた診療です。
次回予告
次回は、方針②「一貫した質を大切にする、ぶれない治療方針」についてお伝えします。
ぜひ引き続きお付き合いいただけますと幸いです。
