研究段階の技術
不妊生殖医療補助技術は日進月歩であり、まだまだ現在進行中です。
現在、治療として効果が確認されている技術もありますが、まだまだこれから改善の余地のある研究段階の技術もあります。ここでは、これから改善されていく余地のある技術に関する情報をとりあげました。当院としても今後、安全性と効果を検証しながら取り組んでいきたいと思っています。
未熟卵体外受精
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GV期
卵子核分裂開始前の卵子です。
中央に大きな核が1個見られます。 -
GVBD期~MI期
大きな核が消失し、卵子核分裂が開始します。極体はまだ放出されていません。
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MII期
卵子核分裂の途中で第一極体が放出され、いったん核分裂は停止します。この状態ではじめて受精可能となります。
IVM-IVFとは卵胞刺激を全く行わず、または少量の卵胞刺激で未成熟卵を採取し、体外で成熟させ、成熟した卵子を顕微授精または通常の体外受精により受精させ、受精卵を子宮に移植する方法です。
世界初のIVM‐IVFでの妊娠例は、韓国のChaらが1991年に摘出された卵巣より未熟卵を採取し、IVM-IVFを行い、得られた受精卵をドナー胚としてレシピエント患者の子宮に移植し、妊娠出産に成功したものです。また、1994年にTrounsonらが多嚢胞性卵巣症候群の患者より未熟卵を採取し、IVM-IVFによる受精卵を患者本人に移植して妊娠に成功しました。

卵の成熟には核、透明帯そして卵細胞質の成熟があります。体内での成熟においてはこの3つの因子が同期して成熟し、受精に適した成熟卵ができると考えられています。これに対し、未成熟卵の体外培養では、核は比較的容易に成熟するため、形態学的にも未成熟卵の核が成熟したことを明確に判別できますが、透明帯や細胞質の成熟は形態学的に判別が困難です。透明帯の未熟については顕微授精やAssisted hatchingにより、ある程度問題は解決されると考えられますが、細胞質の未熟に関しては、細胞質を体外にて成熟させることは非常に難しいと考えられています。この現象自体の本質が解明されておらず、いかにして成熟を促せるかということはまだまだ研究が始まったばかりです。
このように、未成熟卵の体外受精は、まだまま解明しなければならない問題があり、その一般的な臨床応用は、一般の体外受精に比べて妊娠率が低いため、世界中でもあまり行われていません。
今後、卵の体外成熟・IVM-IVFが臨床応用されるには、適応となる患者の選別や学問的・技術的な問題が解決される必要があると考えられます。