2019年 第64回日本生殖医学会(2019.11.7-8 神戸)
イオノマイシンを用いた卵子活性化後妊娠に至った1例
大阪New ART クリニック
New ART リサーチセンター
原武 佑樹松葉 純子森本 有香伊藤 小百合岩瀬 寛子富山 達大
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目的
ICSIの受精率はおよそ70~80%と報告されている。受精障害にはいくつかの因子が関わっていると考えられ、その1つに卵活性化障害が推測される。当院では受精が成立しなかった症例や低受精率の症例に対してCaイオノフォアの1つであるA23187(Calcimycin)を用いて人工的卵子活性化(AOA)を行ってきた。しかしAOAを施行しても受精が成立しない症例も存在し、その症例に対しイオノマイシン(Ionomycin)による卵活性化により妊娠に至った症例を経験したので報告する。
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症例
患者:39歳 主婦 妊娠分娩歴:0妊0産 月経歴:初経14歳 周期26-27日型
家族歴・既往歴:特記すべきことなし 現症:156㎝ 48kg 現病歴:平成25年1月に結婚。右卵管狭窄、左卵管閉塞。2017年に近医にてOPU2回施行しIVF、ICSIともに低受精率を示した。5年6カ月の不妊期間を経て当院受診。1回目の採卵はLong法にて排卵誘発を行いMⅡ卵3個獲得、ICSI後イオノマイシンによるAOAにより1個の受精が成立、Day3にて8cellを1個移植するも妊娠不成立。2回目の採卵は、Short法にて排卵誘発を行い、MⅡ5個を獲得、ICSI後イオノマイシンによるAOAにより3個の受精が成立、Day5にて2個凍結した。凍結融解胚移植を行い、妊娠成立、現在妊娠継続中である。 -
結語
A23817を用いたAOA後に低受精率を示した症例に対し、イオノマイシンによる卵子活性化によって妊娠例が得られたことからイオノマイシンは有効であると考えられた。今後長期的予後調査の必要がある。