学会発表・論文発表

第62回日本生殖医学会(2017.11.16-17 下関)

培養3日目8cell胚における継続培養時の発生についての検討

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

松葉 純子細川 由起森本 有香原武 佑樹松原 健一安部 珠実仲谷 和子富山 達大
  • 目的

    Day3時に8cellに到達している胚は、その後の発生が良好である事が予想される。しかしながらDay3時に8cellに到達した胚の中にはDay5にEarly BL.未満である発生遅延胚が存在する。そこで発生遅延胚の要因を検討した。

  • 方法

    2015年1月から12月の期間、当院にてIVFまたはICSIを行なった患者年齢44歳以下の症例を対象とし、受精確認後Day3時に8cellに分割した534個を対象胚とした。対象胚はDay5時にEarly BL.以上に発生した胚を正常胚、Early BL.未満胚を遅延胚とし、後方視的に患者年齢、採卵回数、採卵数、刺激方法、媒精方法について正常胚と遅延胚を比較した。さらに有意な差が認められたものについてはFisher' exact testを行ない、各項目の群分けを行なった。その後各群における早期分割率、Day3時のグレード、培養液種類(単一または連続培養液)について、正常胚と遅延胚で比較した。

  • 結果

    正常胚と遅延胚で年齢と採卵回数に有意な差が見られた(それぞれ36.5±4.2 vs. 37.4±4.0;p=0.027、2.2±1.9 vs. 2.7±2.2;p=0.010)。採卵数(14.1±10.4 vs. 13.8±10.5;p=0.740)、刺激方法(p=0.753)、媒精方法(p=0.310)に有意な差は見られなかった。Fisher' exact testの結果、年齢では30歳以下、31~39歳、40歳以上の順に有意に遅延胚率が上昇した。採卵回数では4回以上で遅延胚率が有意に上昇した。年齢と採卵回数にて群分けを行ない、早期分割率、Day3時のグレード、培養液種類について比較した結果、31~39歳、3回以内群では早期分割率、Day3時のグレードでは有意な差は見られなかったが、連続培養液で培養した際の遅延胚率が有意に上昇した。患者年齢30歳以下での採卵回数3回以内または4回以上群、40歳以上での3回以内または4回以上群ではいずれにおいても有意な差はみられなかった。

  • 結論

    Day3に8cellであっても患者年齢や採卵回数によりその後の発生に差があることが示唆された。また31~39歳、採卵回数3回以内群で培養液の種類により遅延胚率に差が生じたことより、培養液によりDay3以降の発生に差が生じる可能性が示唆された。