第61回日本生殖医学会(2016.11.3-4 東京)
早期分割胚の有無が胚全体の発生に与える影響について
大阪New ART クリニック
New ART リサーチセンター
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目的
早期分割(以下EC:Early Cleavage)胚は胚発生が良好で染色体構成も正倍数性を示すことが知られている。今回、我々はEC胚の有無が胚全体の質を表すマーカーになり得るのではないかと考え、EC胚が他の同周期胚に与える影響を調べた。
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方法
2010年1月から2016年4月までの期間、当院にてIVFあるいはICSIを行ない、媒精25~27時間後にECを確認した581周期を対象とした。EC確認時に、EC胚を1個以上含む群(EC pos群)と全く含まない群(EC neg群)に分類し、妊娠率および胚盤胞形成率を比較した。さらにEC pos群をEC胚の個数(1個、2個、3個以上)において3群に分類し、同様の比較を行なった。
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結果
EC pos群、EC neg群はそれぞれ332周期、249周期、患者年齢に有意差は認めなかった。妊娠率は各群において27.1%、15.7%であり、EC pos群で有意に高くなった(p<0.01)。EC確認時に1cellであった胚の妊娠率はEC pos群 32.1%、EC neg群 15.9%であり、EC pos群で有意に高くなった(p<0.01)。胚盤胞形成率は各群において39.9%、27.5%であり、EC pos群で有意に高くなった(p<0.01)。EC胚の個数別評価において、EC確認時に1cellであった胚の妊娠率はEC neg群(15.9%)と比較し、EC数1個群(36.4%)で有意に高く(p<0.01)、2個(28.0%)および3個以上(25.0%)の2群においても高い傾向が見られた。EC胚個数別の胚盤胞形成率は、EC neg群(27.5%)と比較して、EC数1個(34.4%)、2個(35.7%)、3個以上(43.7%)の3群すべてにおいて有意に高くなった(p<0.01)。
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結論
EC胚が一つでも含まれる胚集団は、全く含まない胚集団と比較して妊娠率および胚盤胞形成率が高く、EC胚の有無が胚全体の質を示すマーカーになる可能性が示された。