学会発表・論文発表

日本不妊学会 (熊本)

改良型ICSIの有効性の検討

大阪New ART クリニック

New ART リサーチセンター

宮田 広敏馬場 聖子福富 紀子松葉 順子横田 麻里子小泉 あずさ富山 達大
  • 目的

    ICSIにおいて受精率が低い症例を経験する事がある、それには様々な原因が考えられるが、我々は卵子細胞膜周辺に局在するミトコンドリアを吸引し、活性化させる改良型ICSIを実施することによって、受精率が改善するかどうか検討を行った。

  • 方法

    平成17年2月から5月までに改良型ICSIを行った、36周期においてその受精率を比較した。改良型ICSIの方法は、Ebnerらの方法を応用して、第1極体を12時の方向になるよう保持し、ICSIニードルを卵の3時方向から穿刺、反対側の膜付近の細胞質を吸引し、真中に精子と共に細胞質を排出した後、静かにニードルを抜去した。

  • 結果

    通常の ICSIでの受精率が50%以下と低率であった群に改良型ICSIを施行した場合は、通常ICSIの受精率は28%に対して、改良型ICSIでは66%に上昇した。しかし通常のICSIの受精率が50%以上の群に改良型ICSIを行った場合は、通常ICSIと改良型ICSIの受精率はそれぞれ79%と 70%と有意な差は認められなかった。また3回以上体外受精を行っても妊娠に至らない反復不成功例に対して改良型ICSIを行ったところ、通常ICSIと改良型ICSIの受精率はそれぞれ62% と48%と上昇を認めなかった。

  • 結論

    改良型ICSIは膜周辺に局在するミトコンドリアを吸引し、精子の注入された場所に直接ATPを供給するという考えに基づいている。ICSI後に受精が起こらなかったMII卵子はミトコンドリアの複製量が低く活性化が起こらなかったと考えられる。今回の検討の結果、通常の ICSIで受精率が低かった症例において改良型ICSIを用いることにより受精率上昇が認められ、有用な方法であると考えられた。