学会発表・論文発表

日本受精着床学会(東京)

2種類の市販Sequential Media における肺盤胞発達の比較

広島HARTクリニック

大阪HARTクリニック

東京HARTクリニック

中村 早苗松原 朋子向田 哲規高橋 克彦和田 滋子富山 達大吉野 弘美岡 親弘
  • 目的

    胚盤胞移植(BT)法は良好胚の選別が容易、妊娠率を下げることなく胚移植数を減らすことが可能で多胎妊娠防止に有効なことより、本邦でも多くの施設で使用されるようになった。この背景には簡便に使用できる市販のSequential mediaの利用があるが、それぞれの培養液の比較検討に関する報告は少ない。今回我々はGシリーズ(G1.2&G2.2:Vitrolife 社、Sweden)とBlast Assist System(BS1&BS2:Medicult社、Denmark)(BSシステム)とをBT法で使用し、比較検討したので報告する。

  • 方法

    上記3クリニックで2001年7月~9月の間に反復ART不成功例(3回以上)でBT法を行う患者136人を対象とした。各患者の2PNを無作為に分け、初期胚培養をG1.2液とBS1液で行い、採卵3日目に胚の観察の後、後期胚培養をG2.2、またはBS2で行った。 5日目に胚盤胞到達と形態学的特徴を観察した。

  • 成績

    合計998個の2PNを培養し(BSシステム群:566個、Gシリーズ:432個)、5日目に胚盤胞に達した数はそれぞれ302個(胚盤胞発達率53.4%)、167個(38.7%)と有意にBS群が高かった。(p<0.001)。しかし以前Gシリーズで試みたBT周期において胚盤胞発達が全く見られなかった5症例では、BSシステムを使用しても胚盤胞に達しなかった。

  • 結論

    BSシステムとGシリーズは含有するアミノ酸の種類、ph緩衝システム、ヒトインスリンの混入など微妙な違いが見られるものの基本的には胚盤胞培養を2段階で行う同じ手順であるが、今回の比較では胚盤胞発達に有意な差が認められた。しかしながら患者背景に起因する不良胚を rescueすることは共に不可能である点は現在の培養法の限界である。このような結果より市販の培養液を臨床使用する場合は2種類以上の培養法を絶えず比較検討を加えながら用いるべきである。