日本受精着床学会(横浜)
卵巣刺激法におけるGn-RH antagonistの使用経験(ART反復不成功の対策VI) (富山達大)
広島HARTクリニック
東京HARTクリニック
大阪HARTクリニック
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目的
Gn-RH agonistがIVFの卵巣刺激法に応用されるようになってから、採卵方法が簡易となり、その結果IVFの成績も飛躍的に向上した。しかしGn-RH agonistの欠点として、(1)長期投与が必要である(2)HMG投与量が増加する。(3)そのためPCOなどの症例ではOHSS出現率が高くなる。(4)高齢者・Poor Responderの患者ではHMGに対する反応が悪くなる。その理由として(5)卵巣にも直接の影響が示唆される。それらの欠点を補うと考えられる Gn-RH antagonistが2000年ヨーロッパで発売され、我々がこのGn-RH antagonistを使用する機会を得たので報告する。
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方法
対象はHART3クリニックで過去Blastocyst移植を2回以上試みるも妊娠に至らなかった患者21例である。Gn-RH agonistの卵の影響を避けるため、Gn-RH antagonist(Cetrotide ASTA Medica,Germany)の使用理由を説明、全員希望したため自己購入してもらった。卵巣刺激はCC+HMGかHMG法で生理3日目より開始、8日目より卵胞計測・E2測定を始めた。主席卵胞の最大径が14mmになった日にIH測定を行い、Cetrotide0.25mgを皮下注射し、HCG投与日まで続けた。HCG10000IUは卵胞径が18~20mmに達した日に投与した。全例ICSIを施行しBlastocyst移植法を行った。黄体補充は胚移植後よりプロゲストン50mgを毎日筋注し、採卵後16日目に妊娠反応を行った。
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成績
全例で採卵が可能で、自然排卵の例は無かった。平均採卵数は12.8個であった。21例中の20例で胚移植が可能で、そのうち8例に妊娠を認め(40%)、全例妊娠継続中である。
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結論
Gn-RH antagonistがART卵巣刺激法においてPremature IH Surge を防ぐことに有効であった。症例数は少ないが40%の妊娠を得たことは、卵発育段階におけるGn-RH agonistのnegative effectが存在する患者がいる可能性が示唆された。