学会発表・論文発表

日本受精着床学会(岡崎)

不妊治療を受けながら働く女性と職場の意識調査(富山達大)

広島HARTクリニック

大阪HARTクリニック

ローズレディースクリニック等々力

鍵井順子吉岡千代美出口美寿恵平山史朗向田哲規高橋克彦長野靖子富山達大岡親弘
  • 目的

    不妊症治療の現場で患者が働きながら通院する難しさを訴えることは少なくない。今回、我々は働きながら治療を続ける女性患者を対象に職場への治療の告知の実態や両立の困難さなどについて質問紙調査をし、同時に職場の治療に対する意識を把握するため企業に対しても質問紙調査を行なったので報告する。

  • 方法

    1999年12月から2000年1月にHART3クリニックに通院中の女性患者184名に独自に作成した質問紙を渡し、郵送にて回答を求めた。有効回答数(率)は124名(67%)であった。また、同時期に無作為に選んだ492の企業・団体(東京・大阪・広島)に対しても質問紙を送付し、94通(19%)の回答を得た。

  • 結果

    職場に対して不妊症治療を受けていることを知らせている者は68名(55%)で、話した者は「気分が楽になった」(72%)、「理解者が増えた」(33%)と感じていた。また、「話してよかった」と告知に関して肯定的に評価している者が62名(91%)と大多数を占めた。企業側は不妊症に対して、「病気だと思う」38%、「病気とはいえない」36%、「よくわからない」22%と考えていた(無回答3%)、不妊治療による休暇を「他の病気と同様」または「有給休暇扱い」として処理すると回答した企業が8割以上を占め、治療のための休暇をとることが人事考査に影響すると回答したのは3%であった。

  • 結論

    仕事をしている不妊治療中の患者の半数以上が職場に治療について話しており、話したことによる職場の反応、患者側の認知・評価も肯定的なものであることから、治療と仕事の両立を円滑にするために職場に話すことのメリットが大きいことが示唆された。また企業側も不妊症治療による待遇面での差別はしないという回答がほとんどであったが、不妊症を「病気」と認識していないことや不妊症治療に対する知識の不足から、実際に患者が休暇を取る際には問題が生じている可能性も推測された。