学会発表・論文発表

日本受精着床学会(大阪)

TESE-ICSIで反復して分割胚が得られなかった1症例(富山達大)

大阪HARTクリニック

広島HARTクリニック

広島県立大学

富山 達大延澤 みゆき高橋 克彦向田 哲規堀内 俊孝
  • 目的

    TESE-ICSIを5回施行するも、まったく受精が認められないか、2個の前核を認めても分割に至らず、胚移植できなかった症例の卵を分析し、知見を得たので報告する。

  • 方法

    患者は夫48才、妻32才。閉塞性無精子症の診断の下、他施設にてMESA-ICSI2回、TESE-ICSIを1回試みるも全く受精せず当院紹介となる。妻は特記すべき事なし。当院にてTESE施行後、凍結精巣精子を含めて2度のICSIを施行したが受精が認められないか、受精しても分割しなかったので、それらの卵を蛍光核染色法にて分析した。

  • 成績

    11回目はLong法にて卵巣刺激し、11個のMetaphaseII(MII)の卵にICSIを行ったが、5個の卵に2個の前核を認めるも全て分割しなかった。そこで受精卵と未受精卵を分析した結果、分析が可能であった3個の受精卵では全て前核融合が認められず、4個の未受精卵では細胞質内に精子核が認められたもののPCC(Premature Chromosome Condensation)の状態であった。卵の非活性化が原因と推測され、2度目の凍結精子ICSIでは、Short法卵巣刺激にて採卵、卵の前培養時間を長くし、ICSI施行時に意図的に細胞質吸引を多くして卵活性化を試みたが、ICSIを行った14個のMII卵のうち受精ができたのは2個のみで2個共分割しなかった。卵の分析結果は1回目と同様であった。

  • 結論

    ICSIの受精のメカニズムは未だ不明な点が多いが、卵細胞質内に精子は認められるものの、全く受精や分割しない卵の存在が明らかになった。その原因としてPCCの症例が多いことより、核はMIIであっても、細胞質が未熟なため正常に卵活性化が生じないためと推測された。一部のICSI未受精卵の分析にて PCCが多いとの報告はあるが、本症例は正常に細胞質が成熟しにくい女性の存在を示唆した。